大人の階段

仕事の帰りが終電間際になってしまって、おうちでご飯を作って食べる気力がなくなってしまった。あれこれ考えるのも面倒くさくなって、学生さんで混雑するどんぶり屋さんに飛び込み、牛丼を注文。真っ先に出てきたお味噌汁を静かに飲んでいたら、カウンター越しの正面に大学生ふうの3人組がやってきて座り、それぞれ注文を済ますとおしゃべりを始めた。
 
学生A「こんな時だから言うけど、俺さ、オザキとか好きなわけ」
学生B「俺も嫌いじゃない」
学生C「親父がよく聴いてたから俺も知ってる、カラオケでも歌えるし」
学生A「俺、むしろ好きすぎてカラオケ歌えねえ」
学生B「なにそれ」
学生A「歌詞とか噛み締めちゃって泣いちゃう」
学生B「ええー」
学生C「ああでもそういうのあるね」
学生A「もう好きすぎちゃって、なんつーかもうオザキが俺の代名詞っていうか」
 
あやうくお味噌汁でむせそうになるわたし。素朴な感じのする大学生ふうの三人組はいたって素面で話をしていた。 うーむ・・・ 知らなかったよ、きみの代名詞だったのかオザキは・・・
 
学生A「『16の夜』っていう曲があんだけどさー」
学生B「盗んだバイクで走り出すやつだろ」
学生A「超かっこよくねえ?」
学生B「かもなー」(※棒読み)
学生A「だって16でバイク盗んじゃうんだもんなー 俺、酒飲める歳になったけど、そんなことできねぇよ」
学生B&C「・・・」
学生A「しかも16っていうと、まだ無免許の可能性もあんだろ? 誰かのバイク盗んで、しかも無免だろ。俺にはぜったい無理」
 
ほんとうの曲名は「15の夜」なので、おそらく無免許運転だと思う・・・ が、それにしても数十秒前まで「オザキは俺の代名詞」とまで言っていたA君がまさかの「俺には無理」宣言。もうこのあたりでわたしは残ったお味噌汁をそっとあきらめ、牛丼をもくもくと食べ始めることに。
 
学生A「俺なんかせいぜい「自宅のバイクで走り出す」って感じ。しかも免許持ってるし。オザキと比べると俺、超小さくてかっこ悪い」
 
う〜ん・・・! なんかもうたまらなくなって牛丼をかきこみ、あわてて店を出ました。金曜の深夜、24時間営業の牛丼やさんでムセそうになってる妙齢の女性がいても、どうか冷たい視線を向けないでください。
あと、個人的にはわたし、オザキよりA君のほうがちょっと好感が持てます。代名詞とまではいかないけど・・・