四月ばか

知り合いと満開の桜を眺めることに。場所選びがよかったのか、カラオケ客や酔っ払いや青ビニール集団はまったく見あたらず、綺麗な犬を連れた上品な家族連れが集まる公園だった。
日差しは柔らかく暖かく、手元には美味しい飲みものとチョコレート、抜けるような青空をすいと飛んでゆく鳥たち。綺麗すぎて世界が終わってしまいそう、と思って相手に微笑みかけると、鳶色の瞳の奥から微笑みが返ってくる。
ビニールシートやブランケットを持ってこなかったので、そのまま芝生の上に横たわるとまるで空がぐっと迫ってくるみたい。相手のかばんを半分づつ枕にして、空に浮かぶ雲の形を指差し、ああでもないこうでもないと言い合いながら、知らず知らずのうちに触れ合う手。風が冷たくなってきたね、こんなに指が冷たくなってる、ときゅうと握られた指に昨日塗ったばかりのマニキュアのラメ。もうそろそろ引き上げようか、太陽も翳ってきたしきみもまた風邪を引いてしまう。
服についた芝生をはらいながら、今夜は和食と焼酎のお店にしようか、と話しかけるその人の仕草に悪いところはまったくないのだけど、もうすでに本人のなかで一連の流れがマニュアル化されてるのかなと想像すると途端に何かが覚めていってしまう。
そういうエイプリルフールはどうでしょう。この程度の嘘しか思いつきません。ほんとは好きな人とゆく場所がいちばん楽しいのです。きっと来年こそはそんな感じに。