何を読んでたんだろう

ごくたまにお茶を飲む店でチャイを飲んでいたら、店のすみっこで静かに紅茶を飲みながら読書してる男の子がいた。大学生くらいで、本屋さんの紙カバーのかかった単行本を静かに静かに読んでいた。店内には静かにJoao Gilbertの来日公演が流れていて、お客さんは他に2人しかいなかった。本のページをめくる速さはそれほど遅くない。ほそいフレームの眼鏡にしろいシャツ。きっと物静かで、難しい言葉をたくさん知っていて、アパートには小さな黒猫がいて、このあと家に戻ったら自分でお茶を淹れて、ヘッドフォーンでMuzsikasとか聴きながらまた別の本を読んで・・・
そんなことを思っていたら目があい、その途端にしゃぼん玉がぱちんと割れたみたいに正気に返った。向こうは静かに本へ視線を戻す。私も手元の文庫本を再び読み出し、主人公がまた殺人を犯しそうなところで栞を挟んで店を出た。
手短に言ってしまうと、その彼は相当なハンサムだったのだった。