きみの声はぼくの音楽

足元を濡らす雨、気温の上がらない昼間、数泊ぶんの荷物、コンビニの安い傘、修理に出した時計、キャンセルした予約、誰かと一緒に聴いた音楽、すぐに座れたレストラン、あまいデザート、ふたたび雨が濡らす足元、混みあう駅の改札、使い損じの切符、縮尺のおかしい絵柄の看板、雨のなかに浮き上がる街の灯り、フィギュア・スケートのTV中継、ぬるくなったジャスミン茶、はじめて乗る電車、粉末のげんまい茶とアーモンド・チョコレート、屋根にうちつける激しい雨。今日からはじまる数日間のことは、おばあちゃんになってもこの胸にしまっておく。忘れないように、大事にそっと。